えんじゅ

カントリー・ロード

カントリー・ロード


 旅先で学校を訪れると決まって、自己紹介をしてください、と頼まれる。
 黒板に名前を書いて自己紹介をした。日本語には3種類のアルファベットがあって、それらを組み合わせて使います、と説明すると、子どもたちは驚いた顔をする。僕たちはふだんから当たり前に使い分けているが、考えてみれば3種類もアルファベットを持つ国は世界の中でも稀なのだろう。
 古来のひらがなに加えて中国から輸入した漢字を使い、外来語をカタカナで書く。独自の文化を守りつつも、外来の優れたものは積極的に取り入れて融和させていった。日本人は古来から、新しいものを受け入れることのできる柔軟な素地を持っていたのだろう。

 自己紹介がすむと、英語で歌を歌ってくれないか、と先生から頼まれた。日本語の歌を英語で?と聞くと、英語の歌を英語で歌ってください、この子たちはイージーな英語なら理解できますから、と先生。日本の歌を歌ってほしい、とは何度も言われたことがあるが、英語の歌を頼まれたのは初めてだった。
 イージーな英語の歌・・・レパートリーのほとんどないリクエストにしばらく考え込んだが、少しセンチメンタルな気分も手伝ったのだろう、頭に浮かんできたのはジョン・デンバーの「Take me home, Country Roads」だった。僕が京都を離れるとき、大好きな友人が贈ってくれた歌。ここはウェスト・ヴァージニアではなくて、ノービセというネパールの農村だったが、豊かな山と川に恵まれたこの村の子どもたちの前で歌うには、とてもぴったりな歌だと思った。

 「この歌はアメリカの人が、自分のふるさとを思って歌った歌です。みんなも大きくなったら、このノービセの村を離れるかもしれない。そのときは、きっとふるさとが恋しくなることと思います。そんな気持ちは、アメリカ人もネパール人も、それから日本人の僕だって、みんな一緒なんですね。」

 そんなふうに説明してから、歌い始めた。子どもたちが英語を理解できる分だけ、日本の歌を歌うよりも気恥ずかしかったが、彼らが大きくなったとききっと抱くだろう気持ちを、心を込めて歌った。


 Almost heaven, West Virginia
 Blue Ridge Mountains, Shenandoah River
 Life is old there
 Older than the trees
 Younger than the mountains
 Growin' like a breeze
 
 Country Roads, take me home
 To the place I belong
 West Virginia, mountain mamma
 Take me home, country roads
 

 天国みたいな ウェスト・ヴァージニア
 ブルーリッジ山 シェナンドー川
 いのちが古くから
 木々よりも古くから
 山々よりも若々しく
 そよ風のように育まれるところ
 
 カントリー・ロード 僕を連れていってよ
 僕の愛する場所へ
 ウェスト・ヴァージニア 母なる山々
 僕を連れていってよ カントリー・ロード


John Denver "Take me home, Country Roads"  


子どもたち

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