えんじゅ

生きているという現象

生きているという現象


 遠くに聳える山々を望めば、それは悠久の自然のように思える。
 でも季節代わり、足元の自然を見つめると、悠久のように見える自然も、無数の生死の上に成り立っているのだという、当たり前のことに気づく。日々朽ちた他の命を肥やしに、新しい生命が息吹く。私達が他の命を食べて排泄する、その新陳代謝の繰り返しによって、生きているように。私達の身体の中で、日々無数の細胞が死に絶え、無数の細胞が新しく生まれ変わるように。途方もないその刹那の繰り返しが、ただそこにあるだけのように思える。
 そのことを思うとき、植物や動物と同じように、人間が生きているということもまた、自然のダイナミズムに組み込まれた、一つの現象なのだと思える。
 
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