えんじゅ

『星々の悲しみ』 宮本輝著

星々の悲しみ


学生のころ,大嫌いだった現代国語の授業。高校時代には,授業はおろか試験さえほとんど受けなかった気がする。みんなで同じ本を読んで,先生の解説を聞くのが嫌だった。
今考えてみると,小説を解説しなければいけない先生も嫌だったんじゃないかな・・・。

そんなだったから,国語の教科書や試験に,どんな小説が使われていたか,ほとんど記憶にない。でも,この『星々の悲しみ』だけは,試験問題の題材になっていたことをよく覚えている。抜粋されていた箇所まで,よく覚えている。試験問題になったこの小説に,当時の僕は大きな衝撃を受けた。

ぼくは計画性というものをまったく持ち合わせていない人間であると同時に、情熱に惑わされる純粋性すら欠落している人間であるらしかった。

青春期の若者の闇を描いた青春小説の傑作。饗庭孝男さんの解説が,この小説に描かれている青春という時代を的確に表現していて,余すところがない。

この時代は、経験よりも想像が、また現実よりは観念の方にかえってリアリティがあり、書物に傍点をふって人生が分ったつもりになっても、少女の束の間の微笑か、冷たい視線で、それがたちまち霧散してしまう。
スキップしながら人生に絶望するような時代と言ってよい。

現代国語の授業を放棄し続けてしまった僕に,国語教育を批評する資格はない。でもそんな僕がただ1つだけ言えることは,スキップしながら人生に絶望していたような時代に,たった1冊でも長い間心に残る本を紹介してくれただけで,国語教育は成功だったんじゃないかな,ということ。

文藝春秋社 (1981)
『熱球』 重松清著  |  記事の一覧に戻る  |  初ショット