えんじゅ

『熱球』 重松清著

熱球


3日間東京出張だったので,通勤電車の中で読もうと思って買ったこの本。
結局1日目の往復路と,2日目の往路で全部読み終えてしまった。

ストーリーの展開に,それほど新しさや驚きがある訳ではない。悲劇を背負ってふるさとから上京した元高校球児が,娘と共に帰郷する物語。ふるさとを,娘を,そして悲劇からの出発を描いた物語。読みながら予想できるありふれた展開,と言えば,そうかもしれない。でも読み終えて,それでいいのだ,と納得した。

この本の中に描かれている主人公のふるさとへの想いは,ふるさとを後にして大人になった誰もが,同じように共有できる想いなのだ。だから,どちらかというと本を読むスピードの遅い僕が,予想よりも早く読み終えてしまったのは,言葉の意味をいちいち考えることなく,シンプルな言葉が心を浸してくるのを,何もせずにただ受け入れるだけでよかったからだと思う。
離れることが寂しい町は、そのひとにとってのふるさとなのだとも思う。
ふるさとだったら、逃げて帰ってくることができるんだぞ。
好きな点も嫌いな点も含めて,僕の,ふるさとに対するほとんど全ての視点が,この本の中に描かれていた。

徳間書店 (2002)
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