えんじゅ

食文化が出会うとき

籾摺りをするおばさん

 スパイス・ツアーで香辛料と果実を見て回った後、ストーン・タウンに帰る前に、海岸で過ごす自由時間があった。せっかくストーン・タウンから離れたところに来たので、村の生活を見てみたいと思って1人でウロウロしてみた。

 歩いていると、村のおばさんが籾摺りをしているのを見かけた。摺った籾を高いところから下に落として、風で籾殻の滓を吹き飛ばす。なんだか楽しそうに歌を歌いながら、籾をザルですくっては落とし、すくっては落とししていた。
 タンザニアには米食の文化がある。
 アフリカの多くの国の主食はメイズ(トウモロコシ)の粉を練ったもので、タンザニアではウガリと呼ばれている。だけどタンザニアではウガリと同じくらいかそれ以上に米も食べられている。
 僕が住んでいるザンビアのンドラでも、メイン・マーケットに並んでいるのはタンザニアからの輸入米だ。ザンビア人の友人はよく、「タンザニア米はアロマティックだ」という言い方をする。日本米のようなモチモチした食感はないけれど、炒めると香り立ってとても美味しい。
 
ココナッツでご飯を炊く

 米(ムチェレと呼ばれている)を炊いているところを見せてもらうと、これがおもしろかった。
 米の炊き方は2通りある。白米をココナッツ・ミルクと水で炊いたもの(ワリ)と、シナモンなどの香辛料とともに炊き込むもの(ピラウ)。このときはワリを炊いているところだった。
 米と水とココナッツ・ミルクと油を鍋に入れて、薪をくべたかまど(といってもただの石)に置く。乾燥させたココヤシの葉が薪代わりになる。そしておもしろいのは、ココナッツの殻をかぶせて炊くところだ。このココナッツ・ドームの隙間から、米のアロマティックな香りが立ち上っていた。ココヤシの木を余すところなく使った米の炊き方がおもしろい。

ピラウ

 スパイス・ツアーで用意してくれた昼食はピラウだった。今しがた見てきたばかりの香辛料とともに炊き込んだご飯を食べられるなんて贅沢な気分だ。
 ピラウの炊き方も教えてもらった。
 まず鍋で肉をやわらかく煮ておく。別の鍋でタマネギとニンニクを油で炒めて、肉と煮汁、ジャガイモを入れる。それに白米と、カルダモン、クミン、ショウガ、シナモン、コショウ(ホール)などの香辛料、油を加えて炊く。
 チャーハンやビリヤーニと違うのは、白米をまず炊いてから香辛料と混ぜるのではなくて、白米から香辛料や具材と一緒に炊き込むところだ。手のかかるビリヤーニの簡易版といえるかもしれない。
 このときの付け合わせのスープは、オクラ、ナス、トマト、ジャガイモをココナッツ・ミルクで煮たもの。色と香り付けにターメリック。このスープをピラウにかけて食べる。

 この米と香辛料とココナッツの組み合わせも、きっとアラブとインドの影響が強いのだと思う。香辛料と米を炊き込むビリヤーニはもともとアラビア料理だし、ココナッツ・カレーはインド南部の一般的な料理だ。
 文化と文化が交わる場所では、必ず豊かな食文化が生まれるような気がする。ふと思い出したのは、中華とフレンチが組み合わさったベトナム料理。タンザニア料理が美味しいのは、アラビアン、インディアン、そしてアフリカンが組み合わさっているからなのかもしれない。まさにスワヒリ食文化だ。
 食文化が出会うとき、それぞれの文化の美味しいところが残っていくのだろう。それがどこの国から来たものであっても、美味しいものはやっぱり美味しいのだ。
 
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